【本記事は2024年9月に作成されました】

FBARとは?

FBAR(Report of Foreign Bank and Financial Accounts)とは、一定金額を超えるアメリカ国外金融資産を所有している者が行うべきとされている、金融資産開示の情報申告のことです。

アメリカの財務省(Department of the Treasury)の一部署であるFinCEN(Financial Crimes Enforcement Network)に対して提出する情報申告の一種であり、IRSに対して提出するTax Returnとは別物である点を覚えておきましょう。

また、開示した金融資産に関して納税義務が発生するという性質のものではありません。

誰がFBARを提出するか?

FBARをfilingすべきなのは、以下の(1)~(3)の条件をすべて満たす者です:

(1) US person、ここでは市民・居住者・法人・パートナーシップ・LLC・信託・遺産財団のいずれかであること

(2) 米国外にある少なくともひとつの金融口座に対し、金銭的利害関係や署名などの権限があること
※要するに「口座を持っていること」なのですが、名義人である場合はもちろん、名義は別の人であっても実質管理者がtaxpayerなら申告対象になります。

(3) 当該それぞれの口座の年内最高預金額を足し合わせると、合計が$10,000を超えること

※厳密にはFBARの報告対象外となる口座タイプも存在しますが、ほとんどの日本人クライアントは対象外となるような口座を持っていないと思いますので、基本的には「すべての国外金融口座」という認識で問題ありません。
※金融口座のすべてが夫婦共有名義という場合も注意が必要ですが、日本の銀行では共有名義で口座開設ができないため、日本の銀行に口座を持つクライアントの場合は気にする必要はないでしょう。
※ここでいう金融資産は、銀行の預金口座や証券口座のみならず、securities・brokerage・savings・demand・checking・deposit・time deposit・貯蓄性のある保険や年金・投資信託など多岐にわたります。なお、金融口座外の外国株式等の外国有価証券は、FBARの対象外です。
※もし子供名義の口座についてFBARが必要であるにもかかわらず、年齢的に自身でfilingできない等の理由がある場合、保護者などの法的に責任を持つ者が代わりにfilingする必要があります。
※その他、詳細な定義などを知りたい場合は、こちらを参照してください。

いつまでに提出するか?

Due Dateは4月15日となっています。TRと同様、この日が土日祝などに該当する場合は、翌平日に変更されます。
また、もし4月15日を徒過してしまった場合、自動的に10月15日まで延長されます。この延長に伴い、特に手続きは必要ありません。
🤔それなら初めから10月15日ということにしておけば良いのに……と感じますが、何か理由があるでしょう。

どのように提出するか?

FinCENのBSA E-Filing Systemからefileを行います。また、UltraTax等のソフトウェアを使用している場合は、そのソフトから直接filingが可能です。
BSA E-Filing Systemでどのように申告すれば良いのかについては、こちらからアクセスできるマニュアルの「Item Instructions」の項目をチェックしてください。

ペーパーでのfilingも一応できますが、その場合はFinCENのResource Centerに電話をするなどの手続きが必要になってしまいます。よほどの理由がない限りはefileにて申告するのが無難でしょう。

また、米国税理士などがtaxpayerに代わってFBARのefileを行う場合、Form 114a Record of Authorization to Electronically File FBARs にtaxpayerからのサインをもらい、手元に保管しておきます。
Form 114aの書類はわかりやすいため、解説は割愛します。
※FBARに関する事柄の代理人になる場合はForm 2848 Power of Attorney and Declaration of Representativeにサインをしてもらうことになりますが、efileするだけであればForm 114aで足ります。

FBARに必要な情報

Form 114に記入すべきデータとして、以下の情報をtaxpayerから提供してもらいましょう。特に定められた書式などはありませんので、ご自身の使いやすいファイル(Excel、PDF etc.)で記録しておけば問題ありません。

・口座名義
・口座番号
・金融機関の名前と住所
・口座のタイプ(check, saving etc.)
・その年の最高金額

なお、この情報はFBARの申告期限(オリジナルの4月15日)から5年間保存しておくのが原則です。

FBAR代行の流れ

(1) taxpayerの持つ金融資産の合計が、申告年のある時点で$10,000をオーバーしているか尋ねる

(2) もし$10,000を明らかにオーバーしている場合 or オーバーしているかわからない場合、上の「FBARに必要な情報」に挙げた情報をtaxpayerから受領する

(3) 預かった情報をExcel等で整理しながら、「それぞれの口座の、当該年度の中での最高預金額」を足し合わせたものが$10,000を超えるか確認する
※預金がUS$ではない場合、US$に変換する必要があります。そのときのレートとしては、当該年の12月31日のレートを使用します。レートの計算は、アメリカ財務省の金融データを利用するのが原則ですが、他のレート、たとえばIRSが発表している平均為替レートを使用することも可です。

(4) $10,000を超える場合はFBARの必要あり。次のいずれかの方法でfilingする。

(4-1) PDFにひとつひとつデータを入力したい場合、BSA E-Filing Systemから「File PDF FBAR」の「Prepare」をクリックし、所定のPDFを入手。マニュアルに従って記入が終わったら、必要に応じてtaxpayerに確認してもらった後「Submit」から提出。

(4-2) インターネット上でfilingしたい場合、「File Online FBAR」の「Prepare & Submit」に進み、マニュアルに従ってfilingする。

(4-3) UltraTax等のソフトウェアからefileする場合、所定の個所に必要情報を記入していき、ソフト上からefileする。

FBARのペナルティについて

事実や状況に基づき、民事罰・刑事罰などが科されることがあります。ただし、しっかりと説明しようとすると、アメリカの最高裁判所 Supreme Courtでの審理にも触れなければならず、浅学な筆者が解説できるレベルをオーバーしてしまいますので、本記事で詳しく言及することは避けたいと思います。

このSupreme Courtでの議論を知りたいAttorneyなどの方は、BITTNER v. UNITED STATES(2/28/2023)で調べてみてください。興味深い裁判ではありますので、Attorney以外の方も時間があればぜひ。

ともあれ、米国税理士としては、最低限「故意にfilingを怠ると高額なペナルティが発生する可能性がある」ということを覚えておき、taxpayerが適切にFBARを申告できるようサポートできればOKかと思われます。

過去のFBARを提出するには?

そのまま過去のFBARを遅れて提出した場合、ペナルティの対象となる可能性があります。ただし、SFOPのような方法を用いることで、適法に過年度分のFBARを提出できることがありますので、別途条件等について調べてみてください。

ちなみにSFOPで遡ってfilingできるのは6年分ですが、それ以前の分は情報申告しなかったことやレコードキーピングしなかったことに対するペナルティはASED(Assessment Statute of Expiration Date、時効)を迎えていますので、基本的にはペナルティの心配はないと考えて良いでしょう。

参考

FBARと似て非なるものとしてFATCA(Form 8938)があります。これについては別の記事にて紹介予定です。

また、いつかForm 3520 Foreign Gifts and Trusts という情報申告についても解説できればと思っています。

終わりに

慣れてしまえば難しい申告ではありませんが、高額なペナルティをきちんと回避するため、細部までチェックしたうえでfilingすることを心がけましょう。

お問い合わせフォーム


    コメント

    “FBARについて” への1件のフィードバック

    1. […] 産を持っている場合に、それを開示するためのフォームです。類似のフォームとしてFinCEN Form 114(FBAR)があり、こちらのほうが「開示が要求される金額」が低いのですが、Form 8938を出し […]

    コメントを残す