【この記事は2025年6月25日に作成されました】

本記事の目的

Form 1120Fの全体像をざっくり捉えていただくための記事です。詳細な規定には踏み込みませんが、どのようなロジックで1120Fが作成されていくのかのイメージを掴んでいただければ幸いです。

Form 1120Fとは

下記のような目的を持つFormです。
・Foreign corporation(以下外国法人)のアメリカ所得税額を計算するもの
・還付を請求するもの
・Form 8833(租税条約の適用)を送るためのもの
・外国法人の支店利益税(Branch Profit Tax; BPT)を計算するもの
・過大利息に対する税額を計算するもの

提出義務者

主に、次に該当する者が1120Fの提出義務を負います:

〇アメリカ国内でTrade or business(以下TB)に従事した法人
※US源泉所得の有無、条約によって非課税になるか否かは問わない

〇Effectively connected income(ECI)がある

〇アメリカ国内ではTBをしていないがUS源泉の所得があり、源泉徴収された額が納税すべき額に満たない

〇Qualified Derivatives Dealer(QDD)である支店を持っているか、またはそのような支店である

〇還付を請求したい外国法人
※Form 1042-S, Form 8805, Form 8288-Aなどを受領している場合

〇Deductionやcreditによる利益を主張したい外国法人

〇その所得について、租税条約でIRCをoverruleしたい外国法人
※OverruleのためにForm 8833が必要であること

〇そのような外国法人が、申告期日時点で事務所や事業場所をアメリカ国内に持たない場合、そのアメリカ国内におけるエージェント

他方、次のような例外も設けられています:

●直接的にも間接的にもアメリカのTBに関与せず、またアメリカの税は全額源泉徴収済である

●アメリカ源泉の所得は、§881(c)または(d)において非課税とされているもののみである
※881(c)はportfolio interestの非課税規定。10%株主やCFCが受け取ったものや通常TBのなかで行ったローン同意に伴う銀行が受け取る利息を除き、その他のportfolio interestは課税されない。
※881(d)は、§871(i)(2)で規定されている利子や配当の非課税規定。

🤔登録が必要とされている881(c) portfolio incomeを受け取っているのであれば、当局が管理しやすく税額も生じないため、1120Fの提出を免除しても良さそうですよね。

●アメリカのTBに関わる遺産財団や信託の受益者ではあるが、その者自身は他に申告する必要がない

申告期日

会計期末の4か月後の15日となります。たとえばcalendar yearを採用している法人であれば4月15日まで(土日祝日に該当するなら翌営業日)が期日です。

なお、延長はForm 7004を提出することで可能です。このFormを本来の申告期日までに提出すれば延長が認められると思われます。
※アメリカに事務所や事業所を持たない場合、締日の6か月後の15日までに提出すれば足ります。

なお、ECIに対してdeductionやcreditを取りたい場合の「デッドライン」は、当該年度の申告期日から18か月以内となっています。一部例外を除き、これを徒過すればdeductionやcreditは認められません。

Paid Preparer Authorization

該当するチェックボックスにチェックすることで、Enrolled AgentやCPAその他practitionerがIRSとやりとりをする権限を付与できます。この権限付与は翌年度の申告期日(延長含めず)まで有効です。

具体的には以下ができるようになり、別途Power of Attorneyは不要です。

・PreparerがIRSに対して、申告に関する不足情報を提供すること
・PreparerがIRSに電話し、申告状況、納税、還付に関する情報を聞き出すこと
・特定のIRSの通知に対して返答すること

Scheduleについて

(1) Sch. H

Section IIのline 12~27に記載がある場合、つまりECIに関してdeductionがある場合に必要です。

(2) Sch. I

全世界利子費用がある場合に、ECIに対して適切な量だけ按分するためのSch.です。

(3) Sch. P

直接持ち分を有しているパートナーシップに関して、ECIを含むようなSch. K-3(Form 1065)を外国法人が受け取っているときに必要です。

予定納税について

その年の総納税額が$500以上になる見込みならば、その外国法人は予定納税をしなくてはいけません。
予定納税は会計期末の4か月後・6か月後・9か月後・12か月後のそれぞれ15日に行います。

また、予定納税が実際の納税額より多かった場合、Form 4466を使ってquick refundの請求が可能です。

予定納税の額については、§6655やPublication 542などを見ましょう。

もし予定納税を行わなかった場合「Underpayment Penalty」の対象になります。このペナルティの金額は当該年度の税額or前年度の税額の小さい方が採用されます。
🤔ということは、前年度の税額がゼロならばunderpayment penaltyはゼロになりますね。前年度の税額がプラスかマイナスかを事前にチェックするのが重要になってきます。
※支店利益税については予定納税は不要です。

ペナルティについて

【Late filing penalty】

申告期日(延長含む)までに申告をしなかった場合、未納税額の5%がペナルティとして課されます。これは月ごとのレートであり、最大25%まで上昇していきます。
ただし、60日超の申告漏れに関しては、未納税額と$510のいずれか小さい方がminimum penaltyとして課せられますので注意しましょう。

合理的な理由があると信じる場合はペナルティを免除されることもあります。
なお、1120-Fに直接説明を添付するのではなく、IRSからpenalty noticeが送られてきたタイミングで説明を送ります。

【Late payment penalty】

月ごとに未納税額の0.5%がペナルティとして課せられます。こちらも最大金額は未納税額の25%となっているほか、合理的な理由がある場合の免除についてもlate filing penaltyと同様です。

源泉に関するルール

源泉を正しく理解することは、国際的に経済活動を行っている外国法人にとって非常に重要です。

・利子 → 債務者(利子を払う者)の居住地
※アメリカ国内のTBに従事している外国法人に関し、アメリカTBについて支払われている利子は「国内企業から支払われている」とみなします

・配当 → 支払者の居住地
※多少の例外がありますが、詳細に立ち入るため割愛します

・動産や不動産の賃料や使用料 → その動産や不動産の所在地

・不動産の売却や交換に伴う所得 → アメリカにある不動産はアメリカ源泉

・動産の売却や交換に伴う所得 → 外国法人によるものなら原則外国源泉
※在庫について特別ルールがあります
※償却資産の売却益はアメリカと海外で按分する必要があります
※アメリカに事務所や事業場所を持つ外国法人の場合、原則によらず動産の売却益はアメリカ源泉となります

1120Fの各入力項目

【全体について】

・修正申告をする際、添付をする書類にはかならず社名とEINを記載しましょう。また、修正前金額・調整・修正後金額や、どの箇所に関する調整なのかも忘れずに記載すること。

【1ページ目】

・First post-merger returnの項目は、仮に外国法人が別の外国法人と合併し、かつ申告者のアメリカでのオペレーションに影響しない場合、チェックしてはいけません。

・Item A「Country of incorporation」は、複数ある場合はすべて列挙しましょう。

・Item FはPrincipal Business Activity Code(PBA code)を参照します。複数コードが当てはまると思われる場合、どの活動が総収入のうち最大の割合を占めているかで記載するコードを決定してください。
また、nonstore retailer(店舗を持たない小売業者)の場合、販売する主要製品からPBA codeを判断します。

・Line 5iにはForm 1042-S, Form 8805, Form 8288-Aで源泉徴収された金額が入ります。ここにはバックアップ源泉徴収等は記載してはいけません(5zに記載)。
※バックアップ源泉徴収は、たとえばForm 1099提出者(支払者)が受取人から正しい納税者番号を受け取っていなかった場合等に行われる源泉徴収です。

・Line 9には過払税金のうち翌年度の予定納税にあてたい金額を記入します。これは税額の一部でも全部でも構いません。なお、後からこの金額を変更できないため要注意。

・Form 1042-S, Form 8805, Form 8288-Aで源泉徴収されていた還付金等、一部の還付は払い戻しまで時間がかかることがあります。6か月ほどは見るようにしましょう。

【2ページ目】

・Line Lは、アメリカと租税条約を結んでいない国の居住者である外国法人である場合はブランクのままにしておきます。日本は締結していますので、日本法人であれば入力が必要です。
なお、Permanent Establishment(PE; 恒久的施設)とは「a branch office, factory, warehouse or other fixed place of business, but does not include the casual and temporary use of merely storage facilities.」を指します(§521.104(b))

・もしLine K(1)がYes(USTBに従事していた)かつ Line LがNo(PEを有さない)である場合、Line W(1)を埋めたうえでForm 8833を添付しなくてはいけません。

・Line Oにおけるpersonal service corporationとは、前年度(設立初年度の場合を除く)において主目的がpersonal serviceであった会社のことです。事業としては健康・法律・エンジニアリング・建築・会計・年金数理・芸術・コンサルティングが該当します。
🤔これらの職種をしているPSCは税法上の取り扱いが少々異なるため、1120Fでの回答を求めているんですね。

・Line Rでは、NOLがあるときに繰り戻しを放棄し、繰り越しを選択するかどうかを尋ねています。なお、この選択は撤回不可能です。

・Line W(1)は租税条約によってIRCの規定を上書きすことで税額を減らすことを選ぶか否かの質問です。例として「無差別取り扱い」「事業利益」「アメリカ不動産持分を処分したときのgain」「支店利益税」「保険消費税の放棄」「利息配当ロイヤリティ」に関する条項が該当します。

・Line Z(1)にあるarm’s-lengthとは移転価格税制に関する用語です。多国籍企業が二国のオフィス間で取引をしている場合は回答すべきかもしれません。

・Line AAにあるSch.UTPを提出すべきなのは「全資産が$10,000,000以上」「当該法人または関連者が監査済金融報告書を提出している」「その他tax positionのためにSch.UTPを提出する必要がある」というケースです。

・Line FFでは§163(j)における利息費用の制限についてelectionをしているかどうか問うています。たとえばAGIの30%以上の利息費用はdeductionとすることができませんが、163(j)(3)にて、3年間のgross receiptの平均が$25,000,000を超えない企業(§448(c))の場合はこの利息費用の制限は適用されないことにできます。
※このelectionをする場合、不動産や適格改良を減価償却する方法に制限あり。たとえばResidential Propertyの場合は30年(§168(g)(2)(C)になります。
🤔過大利子支払税制の一環かと思われます。

【3ページ目】

Section Iは「ECIではないアメリカ源泉所得がある」かつ「源泉徴収額が納税額未満であるか、正しくForm 1042-Sで報告されていないか、源泉徴収額の還付を求めたい」場合にのみ記入します。

ここにはFDAPの金額を入力していきますが、gross incomeではない・アメリカ源泉でない・ECIでない・exemptなもの等は含んではいけません。なお、1120Fのinstructionにおいては、FDAPは「利息・配当・賃料・使用料・給料・保険金・年金・報酬・その他FDAPの儲けや所得」「特定の天然資源に関するgain」「特許や著作権等の無形資産に関する特定の売却益」などが列挙されています。
※Original issue discount(OID)に関する細かい規定も記載されていますが、ここでは割愛します。

また、Line 9にてGross Transportation Incomeについて言及されています。アメリカ発またはアメリカ着の船舶航空機の使用、もしくはそのような船舶航空機に直接関係するperformanceやserviceに関しては、50%がアメリカ源泉として扱われます。
※ECIである場合や、IRCによってそもそもアメリカで課税されるものは除く。

【4ページ目】

Section IIは、いわゆるECIに関する記載箇所です。外国法人であっても、内国法人と同様21%のflat rateで課税されます。
何がECIに該当するかは、別記事を参照していただくか、1120Fのinstructionをご確認ください。

なお、アメリカに不動産を持っている外国法人は、そのincomeをECIとして扱うようにelectionができます。個人であれば§871(d), 法人であれば§882(d)を確認しましょう。

また、§897(i)についても重要です。外国法人がアメリカ不動産持分(U.S. real property interests, USRPI)を売却したとき、electionをすることで税務上はアメリカ内国法人として扱われます。
これによりgross receiptに対する源泉徴収(§1445(a))を回避できるため、申告および還付をするまで差額が手元に入らないというデメリットを解消できます。

以下、各行に関する解説です:

・いくつかの例外はありますが、line 1aにはadvance paymentも原則含める必要があります。

・Line 5の利息はgrossを入力しなくてはいけません。利息費用で相殺しないようにしましょう。

・Line 10のother incomeには、line 1から9までで記載していないあらゆるECIを入力します。登場頻度が高そうなものを例示すると「税の還付(今年の税額と相殺は不可)」があります。

Deductionは、当然ながらECIに関連しているものに限られます。ですが寄付(charitable contribution、§170)だけはECIに関連していなくてもdeductionとして記載可能です。

また、deductionは該当するincomeに対して計上すべきですが、どのincome項目に該当する経費なのか確実に分類できないものは、カテゴリごとのgross incomeをベースに配分(allocate)しなくてはいけません。
なお、allocationした場合はSch.Hを添付します。
※Gross incomeの比率を使う以外に、明確にカテゴリに関連する比率で配分する方法もあります。
※貸倒損失(bad debt)はSch.Hには含まれませんが、1120F Section II line15において報告されます。

Instuctionにはdeductionの制限として以下のものが掲載されていますが、この記事ではほとんど割愛します。
– Uniform capitalization rules(UNICAP rules)
– 関連者間取引
– 業務上の利息支払
– §291制限(減耗償却に関するもの)
– Start-up cost, organizational cost
– Closely held corporation
– 特定のcreditを取ったときにdeductionを減らす必要があるルール
– 非課税のentityに資産をリースした際のdeduction制限
– 寄付

ただし、Passive activity limitaion(PAL)については重要です:
Personal service corporationとclosely held corporationには、受動所得(materially participateしていないTB, あるいはparticipateを問わず賃貸経営)を得ている場合、Form 8810を提出する必要があるかもしれません。詳細は§469を確認してください。

・Line 17には税金と免許等の費用を記入します。このとき、たとえば次の費用を含めないよう注意しましょう:
– 連邦所得税
– 外国税額控除(FTC)を適用している場合、その外国勢
– 当該外国法人に課せられているわけではない税金
– 物件等の取得や売却に伴って払った税金

・Line 18に記入する支払利子については、過大利息支払税制の関係上、一定の制限があります。詳しくはinstructionを確認しましょう。

・Line 19の寄付金控除においても、いくつかの制限があります:
– 課税所得(line 31)の10%まで ※控除しきれない部分は5年までcarry forward
– 現金・小切手などの現金相当物で寄付した場合、銀行の記録などが必要
– $250以上の寄付については、寄付を受けた者からの書面での記録が必要
– $500以上の資産を寄付した場合、明細を申告時に添付

【5ページ目】

・もし過去3年のうち総収入が1か年でも$500,000,000を超える企業の場合、Form 8991を作成したうえ、Sch.J line 2aを埋める必要があります。

【6ページ目】

・Section III Part Iは支店利益税(Branch Profit Tax; BPT)に関するコーナーです。ただし、これは租税条約を適用(要Form 8833)することで回避できるケースもあるため、記入しないパターンも多いかと思われます。

・Part IIは過大利子支払税制に関するコーナーです。詳細はinstructionを確認しましょう。

【7ページ目】

7ページ目のSch.Lはbalance sheetを記入するコーナーです。基本的には全世界の資産を報告することになりますが、electionをすることでアメリカにある資産およびアメリカでのTBに使用される資産について報告すればOKとなります(§1.6012-2(g)(iii))。UltraTaxにおいては、1120Fの「Basis for completing Schedule L」という項目でelectionをすることが可能です(7ページ目最上部のチェック欄)。
※Incomeのreconcileについても、同条にて「ECIおよびその他のUS源泉所得のみに限ることができる」との記載があります。

・Sch.Lで報告する総資産が$10,000,000以上である場合、Sch.M-3の提出が必要になります。もしM-3が必要なく、かつ総資産(line 17)が$25,000を超えない場合、Sch.M-1にてSch.Lに反映するnet income/lossを報告しなければいけません。

最後に

本記事では割愛した詳細部分も多くありますので、一度instructionをじっくり読み込むタイミングを持つことをおすすめします。


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