【この記事は2025年6月23日に作成されました】
基本概念
Form 8582は非法人納税者が用いるFormであり、当年のPALを算出するため、および前年以前の相殺しきれなかったPassive Activity Loss(PAL)の適用を報告するために使用されます。
※法人の場合はForm 8810を使用することになります。
本Formを理解するためには、まずPALに関する基本概念の理解が不可欠です。
【PALについて】
・PALは、すべての受動的活動からのlossがすべての受動的活動からのincomeを超えてしまったときに生じるものです
・受動的活動は「当年中に納税者が実質的に関与(materially participate)していない取引またはビジネス(Trade or Business, TB)」や「賃貸活動(materially participateか否かを問わない)」を含みます
・PALは原則としてnonpassive activityのincomeと損益通算ができません
・当年に相殺しきれなかったPALは、相殺できるまで、または当該受動的活動に関する全持分を非関連者に売ってしまうときまで、繰り越しが可能です
非常に重要なのは、nonpassive activityとは原則として損益通算(offset)ができないという点、およびその制限には一定の例外があるという点です。
【受動的活動について】
受動的活動ではない活動とは、以下を指します:
– 実質的にそのTBに当年中参加している
– Real estate professionalである
※当年中に納税者がしたpersonal serviceのうち半分以上が、実質的に参加した不動産TBであること、当年中にそのTBに750時間従事したことの両方を満たしたときのみ、real estate professionalとみなされます。
– 石油やガス田の現役の持分
– 納税者自身が住所として使用している居住ユニットの賃貸
– 持分所有者の勘定で動産を取引する活動
【賃貸活動について】
顧客が有形資産を使用する、あるいはそのために保有しており、かつ主として使用料という形でincomeが払われているとき、それを賃貸活動(rental activity)といいます。ただし、たとえば以下のような例外があります:
– 顧客の平均使用期間が7日以下、もしくは30日以下でありかつ不動産を使用可能にするために実質的にpersonal serviceがなされている
– 不動産を使用可能にするために、普通の範疇を超えたpersonal serviceがなされている
– その賃貸が非賃貸活動に付随している
※投機目的のついでに貸している等。具体的にはFMVまたは償却を考慮しないbasisのどちらか小さい方の2%がgross rental incomeである等。
– さまざまな顧客が非排他的に使用できるよう、オフィスアワーに物件を利用できるようにすること
【Active participationについて】
納税者が賃貸活動にactive participationしている場合、非受動所得と$25,000まで損益通算ができるようになります(§469(i))。
Active participationは、たとえば意思決定などをみずから実施している場合に見なされます。具体的には「新しいテナントを受け入れる」「レンタル期間を定める」「資産的出費や修理費用などを受け入れる」等が意思決定としてカウントされます。
また、significantかつbona fideの意味において、サービス(修理など)を提供するよう他者を手配することもactive participationとして見なされるようです。
ただし、以下のケースではactive participationとはみなされません:
– 年内の任意の時点で、価値ベースで10%未満の持分しか持っていなかった
– MFSの場合で、年内に一度でも配偶者と同居していた
🤔ITINがない配偶者がいる外国投資家はMFSを選択するケースが多いはずですが、PALで別のincomeと損益通算したい場合はMFJ扱いにするelectionを活用するなど、MFSを極力選ばないような工夫をすべきかもしれません。
また、MAGI(調整済AGI)の金額によっては、損益通算が可能な金額が$25,000から減ってしまう可能性があります。
🤔MAGIが$150,000以上の場合は損益通算可能額がゼロになってしまうため、PALの条件等について考えなくても良くなるかもしれませんね。
【実質的参加 material participationについて】
Active participationと混乱しやすいですが、あくまで別の概念です。投資家が実質的参加をしているか否かのテストは以下です:
– 前提として「Work」である
※同種の活動において慣習的に行っている仕事である場合、または主目的のひとつがPAL制限の回避である場合は、そもそもworkではない
– 日々のマネジメントに直接関わっている
※たとえば財務諸表等を調査・検討している、財務状況や運用状況の要約や分析を自分のために作成等している、管理職以外の立場で財務状況や運用状況をモニターする等が当てはまる
なお、参加していることを証明するには継続的な日次レポートが必ず要求されるわけではなく、その他の合理的な記録であれば問題ありません。
本Formの提出義務
PALがある者(個人・遺産財団・信託)は提出しなくてはいけませんが、次のすべてを満たしていればPAL制限が適用されず、8582の提出も不要となります:
– Active participationをしている賃貸活動が、納税者の唯一の受動的活動であった
– 控除しきれていない受動的活動からのlossがない
– 賃貸活動からのlossの合計が$25,000(MFSは$12,500)を超えない
– MFSの場合、全年を通じて配偶者と別居している
– 受動的活動からの過去または当年のcreditがない
– 調整済みAGI(MAGI)が$100,000を超えない
– limited partnerや遺産財団の受益者として、賃貸活動の持分を持っていない
PAL制限の適用タイミング
PAL制限は、ほとんどすべての制限(e.g. at-risk)を適用したあとに適用されるものとなりますが、Form 461(excess business loss制限)だけはPAL制限のあとに適用されます。
その後の残った、控除しきれなかったlossがnet operating loss(NOL)となります。
PAL制限が適用されないケース
納税者が受動的活動(かつて受動的活動で合ったものを含む)の持分をすべて非関連者に売却し、かつそれが課税対象の取引で合った場合、lossはPAL制限が適用されなくなります。
補足:賃貸収入はQBIになるか?
「Active participationはしているものの実質的参加はしていない」というケースではQBI deductionは使用できるでしょうか?
その判断をするうえで、QBIの判断フローチャートが便利です。
論点になるのは、QBIの要件である「trade or business(TB)」に該当するかです。8582のinstructionで「Trade or business activities are generally reported on Schedule C」との記載があるため、Sch.Eで報告される賃貸活動はTBに該当しないと考えるのが妥当です。
しかし、Notice 2019-07に次の記載もあります(部分的に省略して引用):
Solely for the purposes of section 199A, a rental real estate enterprise will be treated as a trade or business if the following requirements are satisfied during the taxable year with respect to the rental real estate enterprise:
(A) Separate books and records are maintained to reflect income and expenses for each rental real estate enterprise;
(B) For taxable years beginning prior to January 1, 2023, 250 or more hours of rental services are performed per year with respect to the rental enterprise; and
(C) The taxpayer maintains contemporaneous records, including time reports, logs, or similar documents, regarding the following: (i) hours of all services performed; (ii) description of all services performed; (iii) dates on which such services were performed; and (iv) who performed the services. Such 8 records are to be made available for inspection at the request of the IRS.
このようなsafe harborルールの要件を満たしていれば、賃貸収入は§199Aの適用においてTBとみなされます。
さて、§199Aにおいて「qualified trade or business」は「any trade or business(2つ例外あり)」と定義されているため(§199A(d))、TBであることが前提条件となっています。
そしてこのqualified trade or businessがQBI dedの計算の根拠として使用される流れです(同(a)と(b))。
つまり「safe harborによってTBとみなされる→QBI dedの計算に含まれる」というロジックになっているわけです。
最後に
不動産所得以外のincomeがある納税者にとって、PALの損益通算枠$25,000は貴重な節税の選択肢たりえます。ルールをしっかり理解したうえで最適な申告を目指しましょう。

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